About Obesity
肥満症について

肥満と肥満症

肥満症は病気です!
-診断されたら専門医を受診しましょう

「肥満」とは

脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態。体格指数(Body Mass Index:BMI=体重[kg]/身長[m]2)≧25以上であれば、「肥満」と判定されます。「肥満」だけであれば「高身長」や「色白」などと同様、単なる身体の特徴の描写であって、病気ではありません。

「肥満症」とは

肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、合併が予測される、れっきとした病気です。以下のいずれかに該当する場合に肥満症と診断されます。肥満症と診断されれば、医学的な治療が必要です。

肥満症の診断

  1. 肥満に起因ないし関連する健康障害(11項目)のいずれかを有する場合(下図)
  2. 内臓脂肪型肥満の場合(腹部CT検査で内臓脂肪面積≧100cm2)
あなたはいくつ当てはまりますか?
-肥満症の診断基準に含まれる健康障害
  • 2型糖尿病、耐糖能異常
  • 脂肪肝[非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)]
  • 脂質異常症
  • 月経異常、女性の不妊
  • 高血圧
  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)・肥満低喚起症候群
  • 心筋梗塞、狭心症
  • 腎臓病(肥満関連腎臓病)
  • 脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA)
  • (肥満症診療ガイドライン2022より改変)

「高度肥満症」とは

肥満症の診断基準を満たし、かつ、BMI≧35の場合を高度肥満症と呼びます。
高度肥満症では、表1の健康障害に加え、心不全、呼吸不全、静脈血栓、腰や膝の痛みなど特徴的な病気を合併しやすく、治療上も異なった対応が必要になります。

当センターには日本肥満学会の肥満症専門医・指導医や日本肥満症治療学会の評議員などが複数在籍しており、肥満症の専門的な診療を行っています。

肥満症治療センターの意義

肥満症は多数の診療科が協力して
治療を行う必要のある病気です

内分泌・糖尿病内科

肥満症治療センターを初めて受診される患者さんの窓口として、肥満症の診断、健康障害の評価、治療方針と計画の立案・ご相談に当たります。肥満症専門外来での内科治療を管理栄養士とともに実施するとともに、内科減量入院プログラムを担当します。また内科的な合併症(糖尿病・脂質異常症・高血圧など)の治療、減量・代謝改善手術に向けた調整や手術前・手術後の体重管理、血糖管理なども行います。

消化器外科

減量・代謝改善手術を担当します。外科療法のリスクとベネフィットや手術の実際に関するご説明とご相談、手術の実施、手術後のフォローアップを行います。

麻酔科

肥満は全身麻酔時の偶発症発症のリスクにもなります。減量・代謝改善手術を安全に行うために貢献します。

睡眠医療センター

睡眠時無呼吸症候群は肥満の合併症であると同時に、全身麻酔のリスクを高めます。減量・代謝改善手術を考えるすべての患者さんで睡眠検査を行います。内科治療の方でも随時、精密検査や治療が可能です。

こころの医療センター

肥満症や高度肥満症ではメンタルヘルス上の問題を抱えておられる方も少なくありません。治療を要する精神疾患の有無を確認させて頂いたり、既に治療中の方はかかりつけ医と相談し、薬の調整をさせて頂くこともあります。

整形外科

歩行時、膝には体重の約3倍の負荷がかかります。肥満と関連する膝や腰などの異常について、治療の必要性を確認します。また、減量・代謝改善手術後は骨粗しょう症を発症することがあるのでチェックを行います。

どうやって治療する?
肥満症の治療戦略

肥満症治療が目指すのは、(余剰エネルギー)=(①食べた食事に含まれるエネルギー)-(②消費したエネルギー)を減らすことにあります。つまり①を減らし②を増やすことが肥満症治療の基本です。そのために以下の治療法があり、当センターでは、これらを組み合わせて個別の患者さんの病状と希望に合わせた治療をご提案します。

肥満症の治療指針
(日本肥満学会 肥満症治療ガイドライン2022)
肥満症の治療指針(日本肥満学会 肥満症治療ガイドライン2022)1 肥満症の治療指針(日本肥満学会 肥満症治療ガイドライン2022)2

食事療法

肥満症の最も基本的な治療です。食品と栄養に関して学んで頂き(理解)、頭で分かっていること(知識)を、日々の実生活の中に落とし込んでゆく(実践)こと、飽きずに一定期間続けること(継続)、うまくゆかない時には投げ出さずにやり直すこと(軌道修正)が必要です。当センターでは食事療法の実施と継続を伴走者として応援します。外来での食事療法が不十分な場合には、入院で行う、低エネルギー食(LCD)・超低エネルギー食(VLCD)による治療も実施しています。その場合、原則として約2週間の入院が必要です。

運動療法

食事療法と同じかそれ以上に重要です。運動だけで体重を減らすことは難しいですが、筋肉量を維持・増強したり、代謝活性を増加させて下げ止まった体重をもう一歩減らしたり、血糖を下げたりできます。膝や腰の障害を悪化させないように注意しつつ、有酸素運動を中心にレジスタンス運動やバランス運動を取り入れて行います。

行動療法(認知行動療法)

食事療法や運動療法を実践し、継続するためには日常のライフスタイルを変える(行動変容)が必要です。そのための方法にはグラフ化体重日記、グラフ化生活日記、咀嚼法、食行動質問表などがあります。

薬物療法

食事療法、運動療法、行動療法(認知行動療法)を一定期間行っても十分な肥満改善が認められない場合には、抗肥満症薬を使った治療を行います。クスリの適応には要件がありますので、使用可能かは主治医にご相談ください。

外科療法

2000年頃以降、欧米を中心に減量・代謝改善手術が幅広く実施されるようになり、本邦においても有効性と安全性が確立してきました。現在の体重からの20〜30%程度の減量(100kgの方が70〜80kgを達成)が目指せる場合もあります。手術を受けることで、糖尿病の治療薬が不要になったり、将来の腎不全を予防して人工透析を不要にしたり、寿命を延ばしたりすることの出来る強力な治療ですが、手術のリスク・ベネフィットとともに、術後の生活に関する十分な理解と実行力が必要です。

受診方法と受診後の流れ

さあ、肥満症治療を始めよう!

受診方法

かかりつけの医療施設や近くのクリニックなどにご依頼頂き、これまでの病気の状態や検査の結果、治療の経過、内服薬などに関する情報提供書(紹介状)を受け取って頂いて、これを持参して(できれば事前に当院の受診予約をとって頂き)名古屋市立大学病院肥満症治療センターないし内分泌・糖尿病内科の初診外来(何曜日でも構いません)をご受診ください。

受診後の流れ

下図のように(A)内科外来治療、(B)内科減量入院による治療、(C)外科治療の3つの治療コースがあります。どの治療が医学的に適切かあるいは適応があるか、またご自身が希望される治療はどういったものかについては、個別に主治医とご相談ください。当センターでは減量・代謝改善手術を行う場合には術前の内科の減量入院(約2週間)、手術の1年後の検査入院を行って頂いています。

受診方法と受診後の流れ
医療機関の皆様へ

肥満症では、糖尿病や高血圧、脂質異常症だけでなく、高尿酸血症、非アルコール性脂肪性肝炎、睡眠時無呼吸症候群、不妊、肥満関連腎臓病、心・脳血管障害、腰痛・膝痛、気管支喘息、胃食道逆流症、胆石症、心不全、皮膚疾患など、多彩な健康障害が起こります。医学の進歩により、肥満症は単なる自制心の欠如ではなく、明確な分子病態に基づく疾病であることがはっきりしてきました。1つでも健康障害をお持ちの肥満症患者さんがおられましたら、小太りであっても是非お気軽にご紹介ください。肥満症の専門的治療を行いつつ、併診や逆紹介などの形で先生方のご診療のスムーズ化に貢献させて頂きます。

患者さまへ

肥満症はありふれた病気ですが、治療が困難な難病です。肥満症の治療には、ご自身の努力だけでも、医療従事者の努力だけでも不十分で、両者が協力して当たることが必要です。当センターを受診頂いただけで減量ができる魔法のクスリはありませんが、病状の正確な評価とこれまでのダイエットのご苦労をも踏まえ、肥満症をご自身とわれわれ医療従事者の共通の課題としてとらえ、経験豊富なスタッフが皆さんと手を携えて減量治療に当たらせて頂きます。ご受診時にはかかりつけの医療機関からの情報提供書(紹介状)をご持参ください。

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