名古屋市立大学
消化器外科学教授
瀧口修司 インタビュー
第2弾
最先端治療をもっと身近に
医学の発展に伴い、高度化・専門化・細分化など医療現場が大きく変わるなか、名古屋市立大学病院 消化器外科も進化し続けています。最先端治療をもっと身近にするために、どんな取り組みをしているのか、瀧口修司教授が語ります。
Professor Message
-
名古屋市立大学医学部附属東部医療センター
消化器外科学教授(診療担当)木村 昌弘
「大腸肛門・ヘルニア外来」を
開設。より地域に寄り添う病院へ東部医療センターの前身は市民病院で、さかのぼれば約130年の歴史がある病院です。2021年4月、名古屋市立大学の医学部附属病院となり、大学が掲げる「臨床、研究、教育」の三本柱のうち研究と教育への意識が変わりました。「もっと研究に力を入れよう」「もっと研修医の指導に力を注ごう」と。大学から発信する各種セミナーに参加する機会も増え、向上心あふれる医師には刺激的な環境が整いつつあります。
瀧口教授は名古屋市立大学着任時から当センターで熱心に手術指導され、大学病院と一つのチームという思いで治療に臨んできました。腹腔鏡手術の経験が豊富な瀧口教授は目の付け所がすばらしく、手術に対してワンポイントで的確なアドバイスをされるので、若い医師たちは新たに導入されるロボット支援手術「ダヴィンチ」も含め、日々いきいきと鍛錬に努めています。
もともと地域密着を掲げてきた東部医療センターですが、患者さんのなかには、附属病院化することで遠い存在になったと感じる方もいるかもしれません。従来どおり、身近な存在であると積極的にアピールする一つとして、2021年4月「大腸肛門・ヘルニア外来」を開設しました。痔やヘルニアの病気に悩んでいる方は多いものの、病院に行きづらかったり、大学病院で診てもらうには敷居が高いと思われていたり。そういった患者さんに寄り添う治療を目指しています。大腸肛門とヘルニアの専門医がいますので、今まで以上に、地域の患者さんに安心の医療を届けることができると思っています。
今後は西部医療センターとの連携も深めることも大切です。幸い、西部医療センター消化器外科の三井教授と私は学生時代からの知り合いです。西部・東部の交流を活発にしながら、大学との3院体制を盤石にすることで医療の質をさらに向上していく考えです。 -
名古屋市立大学医学部附属西部医療センター
消化器外科教授(診療担当)三井 章
名古屋市立大学消化器外科が
3院全体で発展していくために西部医療センターは、名古屋市西部と北部にあった名古屋市民病院が合併し、2011年に名古屋市立病院としてスタートした病院です。前身はいずれも地域に根ざした病院で、西部医療センターになってからもその姿勢は揺るぎません。
2010年代前半、消化器外科の腹腔鏡下手術は全手術の5割に満たない程度でした。しかし瀧口教授が名古屋市立大学に着任されてから、医局全体が腹腔鏡下手術へシフトし、7〜8割を腹腔鏡下手術が占めるまでになりました。その後押しとなったのは「患者さんのために腹腔鏡下手術を普及させる」という瀧口教授の熱意です。医局員たちが技術を習得できるよう、強いリーダーシップで導いてくださったことに感謝しています。現在も月1〜2回は医局員が瀧口教授の主催する勉強会に参加し、手術動画を見ながら意見交換するなど、おおいに刺激を受けています。このほど名古屋市北部エリアで初となるロボット支援手術「ダヴィンチ」の導入も決まり、先端医療を提供することで今まで以上に地域に貢献していきたいと考えています。
西部医療センターは名古屋市内で唯一、陽子線治療を提供できる施設です。陽子線治療とは、腫瘍に限定して深部に放射線を当てるもので、私たち外科医が体内にスペーサーというクッション材を留置する特殊な手術を行っています。内科、外科、放射線科、陽子線科がチームで治療を行うことは当院の特徴の一つであり、また外科手術、抗がん剤、陽子線と多くの治療選択肢があることは患者さんのメリットにもつながります。
先進的な治療に力を注ぐ西部医療センターですが「地域に根ざした病院」という役割は創立当初から変わりません。私たちが目指すのは「大学病院であり市民病院でもある」という存在。小さな病気から大きな病気までどんな病気も診る。そんな地域に寄り添う病院であり続けると共に、名古屋市立大学消化器外科が3院全体で発展していくことを目指したいと思います。
名古屋市立大学
消化器外科学教授
瀧口修司 インタビュー
第1弾
内視鏡手術をさらに一歩進めたロボット支援手術
名古屋市立大学病院 消化器外科では、年間900件以上の全身麻酔手術を行っています。そのうち8割以上が内視鏡手術です。開腹手術に比べて患者さんへの負担が少ないことはもちろん、お腹の中の細部まで確認できるので、より精度の高い根治性に優れた手術が可能です。そして内視鏡手術をさらに一歩進めたのが、人間の手のかわりにアームを遠隔操作するロボット支援手術。自在にアームの角度を動かすことで、がんをそのままくるんだ状態で切除できるので、外科医が望む治療を実現する重要なツールとなっています。…
全国で指折りの水準を誇る手術環境
名古屋市立大学病院では、胃がんは全例、直腸がん・膵がん・肝臓がん・食道がん・膵頭十二指腸切除もできる限りロボット支援手術で行います。デジタルハイビジョンをはるかに越える画素数を持った「4K内視鏡システム」を完備し、3Dモニターで術者と助手が遠近感をもって手術するシステムも取り入れ、全国大学病院のなかで指折りの水準を誇っています。
患者さんの立場で考え最善の治療を提案
医療の基本は思いやりです。常に患者さんの気持ちに寄り添い、患者さんの立場になって考え、最善の治療提案ができるように心掛けます。外来で患者さんに手術を説明する際は、ロボットの鉗子のなめらかな動きを実際に見てもらうなど、より安心して手術を受けていただくようにしています。
また、消化器外科と消化器内科は治療のアプローチが異なるものの、扱う病気は同じ場合が多いので、内科と外科の垣根を低くし、協力しながら診療することも重視しています。ベストの治療を互いに検討して提案することは、患者さんにとってもメリットが大きいと思います。
東部・西部医療センターとの連携を強化
2021年4月、東部医療センターと西部医療センターが名古屋市立大学の医学部附属病院になりました。10km圏内の3院いずれにおいても同じクオリティの治療が受けられる。それが私たちに期待されることです。私たちのモットーは「〜いい手術をするために、あらゆる努力をしよう〜Make an effort to perform best surgery」。これからも東部、西部、桜山(名古屋市立大学)が一丸となり、市民の皆さんが安心して生活できる医療環境を整えていきます。