胆道がんとは
胆道とは肝臓の肝細胞でつくられた胆汁の通り道のことで、胆管、胆汁をためる胆嚢、そして胆管の出口である十二指腸乳頭部を指します。 胆道がんは年間約2万人が発症しており、男性では9番目、女性では7番目に多いがんです。欧米ではまれですが、日本を含めアジアなどでは多いとされています。 胆道がんのリスクとして、胆石症や胆管炎、先天性膵胆管合流異常などの胆道疾患のほか、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患が挙げられています。また女性や肥満、高カロリー摂取などもリスクと考えられていますが、現在のところはっきりとした原因はわかっていません。 胆道がんは、肝外胆管がん(肝門部領域胆管がん・遠位胆管がん)、乳頭部がん、胆嚢がんにわけられます。どの部位にがんができるかによって病名や治療法が異なります。 初期は無症状であることが多く、検診などで胆道酵素のALPやγGTPなどの上昇や、腹部エコーで胆管拡張を指摘され発見されることがあります。胆道がんでは、胆汁の流れが悪くなることによる黄疸や肝機能障害、みぞおちや右脇腹などの痛み、そのほか倦怠感や食欲不振などの症状がみられます。しかし症状を伴っているときはがんが進行していることも少なくありません。一般的に胆道がんは見つかりにくいと言われており、手術以外に有効な治療法が少ないことからも予後が悪いがんとして知られています。
肝外胆管がん
肝門部領域胆管がん
肝門と呼ばれる肝臓の中心にがんがあるため、肝臓や、肝臓に流入する血管などにがんが広がる可能性があります。唯一治癒を期待できるのが手術で、肝臓の半分を一緒に切除する肝葉切除+肝外胆管切除が標準術式となります(胆嚢も切除範囲に入ります)。切除後は切り離された胆管を小腸(空腸)に吻合します(胆管空腸吻合)。肝臓の容積を多く切除することで術後に肝不全となる危険性があるため、手術の約1ヶ月前に、切除を予定している肝臓の門脈(肝臓の栄養血管のひとつ)を閉塞させておく方法も取られます(門脈塞栓術)。
肝門部領域胆管がんに対する中央 2 区域切除・尾状葉切除+肝外胆管切除
遠位胆管がん
手術が唯一治癒の期待できる治療法です。胆管の下流は膵臓に埋もれているため、膵臓や十二指腸へがんが広がる可能性があります。そのため膵頭部がんと同じように膵頭十二指腸切除術が基本術式となります。
胆管の広範囲にがんが広がっている可能性がある場合、肝切除を伴う膵頭十二指腸切除術(Hepatectomy with pancreaticoduodenectomy;HPD)をおこなうことがあります。しかし、複数の重要臓器をまたぐ大手術であり、その適応には病状や患者背景などを踏まえた慎重な判断が必要です。私たちは内科や放射線科とチームを組んで、胆道がんの進行範囲を的確に把握し、患者さんの状態に応じた過不足のない治療を行っております。
乳頭部がん
胆汁が通る胆管は十二指腸に開口します。胃カメラで観察すると、ちょうど腸の壁に膨らみとして確認できます。十二指腸乳頭部は胆管のほかに膵管も開口しています。
胆道がんのうち、胃カメラで観察が可能ながんであり、早期発見・早期治療が可能なことも多く、予後は胆道がんの中では比較的良いとされています。
術式は遠位胆管がんと同様、膵頭十二指腸切除術が標準術式です。
胆嚢がん
胆嚢の壁には他の臓器と異なって、もともと粘膜筋板という層がなく薄い構造をしています。そのため、がんが壁の深いところや肝臓など周囲の臓器へ簡単に広がりやすい構造をしています。
胆嚢がんは末期になるまで症状が出にくいと言われており、早期胆嚢がんは、胆石症などで偶然摘出した病理組織で発見されるか、検診などで胆嚢ポリープとして見つかることがほとんどです。そのため、胆嚢ポリープのうち10mmを超えるものや、急速にポリープが増大してきたものは、胆嚢がんの可能性があり手術が勧められます。
早期のものでは胆嚢摘出術のみで十分ですが、肝臓に広がっている可能性があるものは、肝臓の一部をあわせて切除する術式が必要です。
胆石症など良性疾患では腹腔鏡手術が標準となっていますが、近年、胆嚢がんでも早期のものについては腹腔鏡手術がおこなわれています。