チーフ
森本 守
講師
専門分野
内視鏡外科・肝胆膵外科
チーフ
森本 守
講師
専門分野
内視鏡外科・肝胆膵外科
肝胆膵グループでは、患者様に安心して受けていただく外科治療を行っています。
診療科の垣根を超えたチーム医療:肝胆膵疾患の病態は複雑で、診断に難渋することが多いです。私たちは専門の内科や放射線科と連携し、チームで診療にあたっています。
肝胆膵のスペシャリスト:スタッフはすべて消化器外科専門医です。手術は厳しい資格試験をクリアした、肝胆膵高度技能医、内視鏡技術認定医、ロボット手術有資格者が担当します。
高難度でも患者様に優しい手術:病態に応じて低侵襲手術(腹腔鏡やロボット手術)に取り組んでいます。その経験数と技術は学会でも高い評価をいただき、ロボット膵臓手術の指導施設に認定されています。
炎症を制し、がんを制す:遺伝子パネル治療から、発癌率を低下する慢性膵炎の外科治療まで、癌治療を幅広く網羅しています。米国最大の癌センター勤務の経験を活かし、患者様に最適な治療を提供いたします。
肝胆膵グループが向き合う疾患は病態が複雑なことが多く、患者さん一人ひとりによって治療法が異なります。内科との合同カンファ、肝胆膵グループカンファ、消化器外科全体のカンファなどを重ねることにより、患者さんに一番適した治療法を選択しています。進行がん症例には切除の限界まで、早期がんや良性腫瘍に対しては低侵襲な腹腔鏡下手術を積極的に導入しています。過不足のない、患者さんに適した外科治療を提供しています。
高度で先進的な医療を安全に提供させていただくために、シミュレーションとナビゲーションに力を入れています。3次元画像解析システムの導入や、3Dプリンターによる立体臓器モデルの作成により、術者全員が「共通したイメージ」を持って、より安全で精細な手術を行っています。さらに、病変を正確に把握し、腫瘍を適切に切除するために術中ICGナビゲーションシステムを導入しています。
消化器がんの中でも、肝胆膵領域のがんは悪性度が極めて高いです。手術を中心としたがんの集学的治療を可能にするには、がんの本質に迫ることが不可欠です。私たちはがんの分子生物学的な研究から臨床応用を目指したトランスレーショナルリサーチまで積極的に行っています。米国最大級のがんセンター(MD Anderson Cancer Center)とも共同で研究を行い、その成果は国内外で高い評価を頂いています。
進行がんに対する血管合併膵切除や、病態が複雑な慢性膵炎手術、難易度の高い肝胆膵外科領域の腹腔鏡下手術を推進しています。
これらにより、全国平均で2-3%と報告されている周術期の死亡症例を私たちの施設では認めておりません。また、これらの取り組みは良好な治療成績に結びついています。例えば、膵がん術後の3年生存率は全国平均で23%と報告されていますが、当院のそれは40%を越えています。今後も高度で先進的な医療を安全に提供していく取り組みを進めてまいります。
実際の手術では肝臓内部の腫瘍や血管の位置関係は表面からみただけでは判別できません。
肝実質を透見出来るように3次元画像構築を行うことで立体的な位置関係が把握しやすくなります。
患者さんの身体への負担を軽減しつつ、安全で精度の高い手術を行うように心がけています。
肝臓がんには、「原発性肝がん」と「転移性肝がん」があります。「原発性肝がん」には、肝細胞から生じる「肝細胞がん」と肝内胆管から生じる「肝内胆管がん」がほとんどを占めています。「転移性肝がん」は他の臓器から転移して肝臓に生着した腫瘍のことをいいます。
肝細胞がんの原因はB型、C型肝炎ウィルスの持続感染による慢性肝炎・肝硬変が多く、近年ではアルコールや非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が注目されています。肝細胞がんの治療には手術切除、ラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓術、化学療法、放射線療法などがあります。肝細胞がんは門脈を介して肝内転移をおこす可能性があるため、基本的には、腫瘍の局在する領域を栄養する門脈血流領域を一括に切除する系統的肝切除を行います。
当科ではすべての患者さんに、CT画像を3D構築するソフトや3Dプリンターを利用した術前シミュレーションを行っています。腫瘍の位置や大きさ、数、肝機能を考慮し、個々の患者さんにあわせたオーダーメード治療を積極的に行っています。
当科では、腹腔鏡下肝切除術を積極的に導入しております。腹腔鏡下手術は、傷が小さく低侵襲で、早期の社会復帰が期待できる手術方法です。難易度の高い系統的肝切除術にも積極的に腹腔鏡下手術を導入しています。腹腔鏡下系統的肝切除術は難易度の高い手術方法ですが、日本肝胆膵外科学会高度技能専門医と日本内視鏡技術学会技術認定医の両資格を併せもった医師が診療にあたっております。一方で、進行した肝臓がんに対しても積極的な外科切除を行っておりますが、治療方法は一つではありません。肝機能や腫瘍性状の条件によっては、外科手術、局所療法(ラジオ波焼灼)、化学療法(抗がん剤治療)、放射線療法など治療方法を選択する必要があります。他科との綿密な連携の下、最も患者さんに合った治療を行っています。
胆道がんとは、肝臓が産生した胆汁の流れ道にあたる胆管、胆汁を蓄える胆嚢、および胆汁が腸管に流れ出る乳頭部にできるがんを指します。発生する部位によって、胆嚢がん、肝外胆管がん(肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん)、および乳頭部がんに分類されます。
一般的に、ほかのがんと比べると見つかりにくいこと、また手術以外の有効な治療法が少ないことから、予後の悪いがんとして知られています。
胆道がんは手術が唯一治癒を期待できる治療法です。しかしがんのできる部位によって、切除する臓器や切除後の再建方法が異なり、手術の難易度や患者さんの負担も変わります。
肝外胆管がんのうち、より肝臓に近い肝門部領域胆管がんでは、胆管や胆嚢のほかに肝臓の半分を切除(肝葉切除)し、また切除した胆管を小腸につなぐ(再建)ことも必要となります。さらに胆管の下流の遠位胆管がんや乳頭部がんでは、周囲に膵臓や十二指腸などがあり、膵臓の一部や十二指腸を含めて切除します(膵頭十二指腸切除)。
同じ胆道がんという病名でも患者さんごとに病態は異なり、それぞれに適した術式を選択することが重要です。私たちは内科や放射線科とチームを組んで、がんの進行範囲を術前に適確に把握し、過不足のない、根治を目指した治療を行っております。また、術後の補助化学療法や転移巣への放射線治療など、様々な治療を組み合させて胆道がんと闘っております。
膵がんは消化器がんの中でも悪性度が高く、治療が難しい疾患の一つです。初期には症状が出にくく、見つかった時には進行してしまっている場合も少なくありません。また、膵臓は周囲に重要な大きな血管が多数走っていることや強力な消化酵素を含む消化液が流れる管が通っていることから、手術に伴って重大な合併症が起こりやすく、慎重かつ確実な手術を行うことが求められます。
当科では、患者さんに必要以上に負担をかけず根治性も損なわない過不足のない手術を心がけています。進行した症例には手術前に化学療法を行ったのちに、積極的な切除を行い根治度の高い治療をめざしています。安全な手術を受けていただくために、複雑な膵臓周囲の血管構造を3D画像(volume rendering: VR)でシミュレーションを行い、術後も頻回なカンファレンスで治療経過を詳細に検討しています。膵手術の全国平均死亡率は2~3%ですが、当科では手術登録制度開始以降、手術関連死亡を認めておりません。 安全かつ患者さん一人ひとりにあった治療を内科や放射線科とチームを組んで行っており、3年生存率も全国平均を大きく上回っています。治療方針に迷われている方は是非ご相談ください。
慢性膵炎は、膵臓で作られる消化酵素が膵内で活性化し、自分の膵臓をゆっくりと溶かす(膵の自己融解)病気です。炎症を繰り返すことによって正常の膵組織が間質といわれる線維組織に置き換わり、膵臓は全体に硬くなることによって膵機能が低下し、体重減少や糖尿病が現れます。膵臓の硬化と膵石が生成されることにより、膵液の流れ道である膵管の圧が上昇して腹痛を生じます。慢性膵炎の原因は飲酒に関連することが多いですが、遺伝性や原因が不明の特発性もあります。また、慢性膵炎になると膵がんを発症する確率が正常膵に比べて10~20倍に上昇するといわれています。当院の慢性膵炎の治療方針は、内科とカンファレンスを行い、それぞれの患者さんの病態に応じて適切な治療を選択しています。まずは内科的治療が行われることが多いですが、治療の期間が長くなることが予想されたり、症状が再燃する場合には、患者さんの希望に応じて、積極的に早期から手術治療を行うようにしています。当科では、1984年頃から慢性膵炎に対する外科治療を積極的に行っており歴史があります。現在ではFrey手術(膵頭部くり抜き+膵管空腸側々吻合)を基本術式とし、病態に合わせた最適な術式を選択しています。膵管内圧を減少させることを大原則に術式を決め、必要に応じて神経叢切離を付加しています。これにより膵機能が温存され、体重の増加などといった全身状態の改善も認めることが多いです。また、当科の慢性膵炎の手術成績として、術後の疼痛緩解率は93%を超えており、十分に患者さんのニーズに応えうるものと考えています。慢性膵炎でお悩みの方は、是非ご相談ください。