大腸や小腸の粘膜に慢性的な炎症や潰瘍を引き起こす疾患で代表的なものに潰瘍性大腸炎、クローン病があります。

潰瘍性大腸炎とは主に大腸粘膜に潰瘍やびらんが生じる病気です。若年から高齢者まで幅広い年齢層に発症し、10-30代に多く見られます。
原因はよくわかっておりませんが、免疫系の異常によって引き起こされると考えられており、いくつかの発症に関する遺伝子も同定されております。症状としては血便、粘血便、下痢などがありますが、軽症例では症状が伴うこともあります。長期にわたって罹患している方は大腸がん発症の危険性が高くなるともいわれております。

口腔から小腸、大腸、肛門までの消化管のいたるところに慢性的な肉芽腫炎症を生じる疾患です。10-20歳の比較的若い年齢に多く見られます。やや男性の方が多いようです。原因はよくわかっていなく研究段階にあります。免疫系の異常や食べ物など環境的な因子が関与しているともいわれております。多くは回腸末端、肛門周囲(痔瘻、裂肛、肛門潰瘍)に生じます。症状としては腹痛、下痢、発熱、体重減少などがあげられます。血便はそれほど多くはありません。
両者の治療は主に薬物療法、栄養療法など内科的治療が中心ですが内科的な治療でコントロールできなかったり、継続できない場合も含めて外科的な治療を要することもあります。当院では内科と外科が緊密に連携して最適な治療を提供しております。また手術では傷も小さく術後の開腹も早いため積極的に腹腔鏡下手術を行っています。

潰瘍性大腸炎で手術が必要な場合

大腸がんが見つかった場合、内科的治療で病状がコントロールできない、副作用が出て継続できないなど手術治療が必要となります。大腸穿孔(穴が開く)や大量出血(下血)を起こした場合は緊急で手術が必要となることもあります。

大腸全摘、回腸嚢肛門吻合(IAA)

肛門括約筋(おしりを締める筋肉)を温存し、直腸の粘膜を含め大腸を全摘出します。その後、回腸で貯留嚢を作成して肛門(歯状線)と吻合する術式です。大腸の粘膜をすべて取り除くため炎症やがん化の危険性を取り除くことができます。通常は一時的に回腸人工肛門を造設します。

大腸全摘、回腸嚢肛門管吻合(IACA)

おしりを締める部分の直腸粘膜を残して回腸で作成した貯留嚢を肛門管と吻合します。IAAと比べて便失禁などは少ないですが、残存した粘膜の炎症の再燃やがん化の危険性が残ります。
その他症状、年齢、排便機能に応じて結腸全摘+回腸直腸吻合や大腸全摘+回腸人工肛門造設術なども行っております。

潰瘍性大腸炎と同様に内科的治療が中心ですが内科的治療でコントロールがつかない、腸穿孔、瘻孔形成、中毒性巨大結腸症(腸が巨大になり毒素やガスがたまって排出することができなくなる)、狭窄(腸の通り道が狭くなる)、難治性の腸管外合併症(発育障害、壊疽性膿皮症)などがある場合手術を行います。また痔瘻を合併することも多くこれに対する手術も行っております。