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診療案内

食道がんとは

 
 
 

食道がんとは

食道がんは食道粘膜から発生する悪性腫瘍です。進行すると周囲のリンパ節や肝臓や肺などの遠隔臓器に転移を来します。

食道の構図

日本胸部外科学会ホームページより転載

(日本胸部外科学会ホームページより転載)

所属リンパ節番号

所属リンパ節番号

(日本食道学会編 食道癌取り扱い規約 第11版
金原出版より転載)

進行度

(日本食道学会編 食道癌取り扱い規約 第11版
金原出版より転載)

治療の必要性

食道がんの治療は、進行度別に食道癌診断・治療ガイドラインに示されています。治療は、大きく分類すると、内視鏡治療、手術治療、化学放射線治療、化学療法に分けられます。治療はこれらを組み合わせて行います(集学的治療と言います)。

当院における食道がんの治療方針

食道がんの臨床病期と治療

食道がんの臨床病期と治療

手術について

手術は、食道を亜全摘する方法で、食道がんに対する現在最も標準的な治療法です。手術では、胸腔鏡を使って開胸しないで、がんを含め食道を切除します。同時に、リンパ節を含む周囲の組織を切除します(リンパ節郭清)。食道を切除した後には、腹腔鏡下を使って開腹しないで、胃の周囲のリンパ節を郭清したのち、胃を使って(空腸や大腸を使うこともあります)、食物の通る新しい通路をつくる再建手術を行います。引き上げる経路は

  1. 胸骨の下で心臓の前を通す方法
  2. もとの食道のあった心臓の後ろを通す方法
  3. 前胸部の皮膚の下を通す方法

の3通りがあります。
当院では、患者さんに早期社会復帰していただけるように、積極的に胸腔鏡や腹腔鏡を使用した低侵襲手術を行っています。

食道の図1

食道の図2

食道再建の経路

手術の創部

手術に伴う合併症

食道がんの手術は外科手術の中でも最も大きいもののひとつで、患者さんの体に与える影響も小さいものではありません。従って、様々な術中術後の問題(合併症)が生じる可能性があります。術中術後管理が発達した現在においてもこれら合併症を100%防ぐことはできません。手術に伴う合併症は肺炎、縫合不全(つなぎ目のほころび)、肝・腎・心臓障害です。これらの合併症が死につながる率、すなわち手術死亡率(手術後1ヵ月以内に死亡する割合)は2~3%です。これらの発生率は、手術前に別の臓器に障害を持っている人では高くなります。

術後出血

手術後当日から翌日にかけ、いったん止血された部位から出血を来すことがあります。大抵は輸血を行いながら様子を見ますが、出血の多いとき、なかなか自然には止まりそうにないときは再度手術室にて創を開いて止血術を行う事もあります。

縫合不全

手術では食道を切除した後で持ち上げた臓器と残った食道をつなぎます。通常は術後7日目前後に造影検査をして、きれいにつながっていることを確認した後に食事が始まりますが、吻合の一部につながりの不完全な部分ができることがあります。これを縫合不全といいます。通常では1~2週間の食事中止で治りますが、栄養状態が悪い人や糖尿病の人、肝臓の悪い人、術前放射線療法を行なった部分での吻合などではもっと長期間を要する場合もあります。縫合不全の規模が大きい人では、その部分から唾液などが漏れ出て胸の中にたまり、炎症を引き起こすことがあります。皮膚の創を通して身体の外に唾液が出てくることもあります。吻合のやり直しを行わなければならないような縫合不全もあり、その際には食道を頸部のきずから外に出し(頸部食道外瘻)、全身状態が改善してから別の臓器で再建を行う事もあります。

反回神経麻痺

食道がん手術の場合、反回神経と呼ばれる左右一対の細い神経沿いのリンパ節に転移を起こしやすいためこの部分の郭清が重要となりますが、この神経は細く非常に弱いために、手術操作によりこの神経が障害を受け麻痺することがあります。これを反回神経麻痺といいます。時には神経に直接食い込んだ転移リンパ節などのがんをきれいに取り除くために、意図的に反回神経を切断する場合もあります。反回神経の麻痺が起こると声がかすれます。また誤嚥をおこしやすくなり、肺炎の原因となることもあります。通常3~6ヶ月ほどで回復しますが、誤嚥を繰り返す人では声帯の手術が必要となることもあります。反回神経麻痺は右側より左側に起こることが多く、通常は起こるとしても左側片側の麻痺ですが、ごくまれに両側反回神経麻痺が生ずる場合があります。この場合は安全のため、気管切開を行います。両側反回神経麻痺が生ずると、通常じっくりと時間をかけた機能訓練が必要になります。

術後肺炎

食道がんの手術では 20%程度の患者さんに肺炎が合併します。これは、(1)開胸手術、(2)喫煙、(3)気管に入る血流や神経の切離、(4)声帯の運動をつかさどる反回神経の損傷による誤嚥などが原因で肺に痰が貯まって発生します。万一、肺炎がひどくなった場合には一時的にのどを小さく切開し(気管切開)、直接、気管内にチューブを挿入して人工呼吸器をつけることもあります。気管切開すると声が出せなくなりますが、肺炎が良くなってチューブが抜ければ、声は出せるようになります。
術後肺合併症を予防するために、術前から(入院前から)呼吸訓練、禁煙、歯磨き、口腔ケア(口の中のバイ菌が気管を通って肺に運ばれ、肺炎の原因となるので)を行っていただきます。

にゅうきょう

腹部で下半身や腸管から集められたリンパ液(もともと血管から漏れ出た液体成分)は上腹部で集められ、からだの中で最も太いリンパ管となって胸の中の食道のすぐそばを上行し、通常左頸部で静脈に戻されます。このリンパ管を胸管といいます。がんが浸潤している場合以外はこの胸管を切除せず、温存しています。しかし、リンパ管は非常にもろいので、手術操作にて傷がつき、漏れが生ずることがあります。この様な場合、術後に胸水が大量に流出します。
これをにゅうきょうと言います(乳糜とは腸管から吸収された脂肪球を含んで白く濁ったリンパ液のことです)。小規模なものは保存的な方法で治せますが、大規模なものは再手術で漏れを止める必要があります。

術後せん妄

食道がんの手術ならびに術後は患者さんにとってかなりのストレスとなります。これが原因で、術後せん妄(ボケに近い症状)が起こることがあります。ひどくなればやむを得ず、身体をベルトで固定しなければいけないこともあります。

その他の治療法

切除可能な食道がんに対する手術以外の治療法として化学放射線治療があります。これは、抗がん剤と放射線治療を組み合わせて同時に行う治療法です。手術と比較して、体にメスを入れないメリットがありますが、腫瘍が残存したり、再発したりする場合があります。治療に伴う死亡率は、手術と同程度(3%程度)と報告されています。また、腫瘍が再燃、再発した場合に、手術(救済手術)を行うことがありますが、術後合併症の発生率、周術期死亡率が、通常の手術と比較して有意に高い治療となります。