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次世代のがん治療を目指して、
がんの本質に迫る
私たちは手術でがんの治癒をめざしています。そのためには、がんの進行メカニズムを熟知する必要があります。なぜならがんは正常な組織に比べて増大するスピードが早く、血管やリンパ管にのって転移をします。そのため、その特性をよく理解して手術をすることが、より高い治療成績に結びつくからです。また症例によっては、手術の前後に抗がん剤や放射線治療を行う“集学的治療”が治療成績を向上することがわかってきました。そのため、集学的治療をふまえた新たな抗がん剤の開発も次世代のがん治療には不可欠です。このような考えに基づき、私たちはがんに関する研究に力を入れています。分子生物学的な基礎的研究から、創薬を目指した臨床研究まで幅広い研究を行っています。各グループのチーフは、カリフォルニア大学やMDアンダーソンがんセンター(米国最大のがんセンター)での研究経験があり、最先端のがん研究を行っております。
私たちの研究室での
今までの受賞歴とその内容
私たちの研究は国内外の学会から高い評価を受けています。
2006年 第15回日本病態治療研究会 |
優秀演題賞 松尾 洋一 |
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2007年 American Pancreatic Association 38th Annual Meeting |
APA Travel Award 松尾 洋一 |
2009年 第47回日本癌治療学会学術集会 |
最優秀演題賞 松尾 洋一 |
2010年 第19回日本がん転移学会学術集会 |
優秀演題賞 松尾 洋一 |
2010年 第18回日本日本消化器関連学会週間(JDDW2010) |
ポスター 優秀演題賞 松尾 洋一 |
2012年 第20回日本日本消化器関連学会週間(JDDW2012) |
ポスター 優秀演題賞 松尾 洋一 |
2013年 10th International Gastric Cancer Congress |
Best Poster 松尾 洋一 |
2014年 第52回癌治療学会 |
優秀演題賞 原 賢康 |
2016年 第25回日本がん転移学会学術集会 |
優秀ポスター賞 松尾 洋一 |
2017年 第25回日本日本消化器関連学会週間(JDDW2010) |
ポスター優秀演題賞 原 賢康 |
2018年 第26回日本日本消化器関連学会週間(JDDW2010) |
ポスター優秀演題賞 安藤 菜奈子 |
2018年 第26回日本日本消化器関連学会週間(JDDW2010) |
若手奨励賞 安藤 菜奈子 |
2018年 第26回日本日本消化器関連学会週間(JDDW2010) |
若手奨励賞 林 祐一 |
2018年 第56回日本癌治療学会学術集会 |
優秀演題賞 原 賢康 |
2019年 第57回日本癌治療学会 |
優秀演題賞 松尾 洋一 |
2020年 第31回日本消化器癌発生学会総会 |
優秀演題賞 大見 関 |
2021年 第42回癌免疫外科研究会 |
奨励賞 林 祐一 |
2021年 第30回日本がん転移学会学術集会・総会 |
優秀ポスター賞 大見 関 |
2022年 第145回名古屋肝疾患研究会 |
優秀演題賞 林 祐一 |
2022年 第28回侵襲とサイトカイン研究会 |
会長賞 傳田 悠貴 |
2023年 第25回日本亜鉛栄養治療研究会学術集会 |
奨励賞 村瀬 寛倫 |
私たちの教室での
科学研究費助成一覧とその内容
2017年
17K10644 ポリフェノールによるBcl-xLに対する作用機序の解明と新たながん治療法の開発 |
基盤研究C 研究代表者 高橋 広城 |
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17K10708 臨床応用を目指した膵癌におけるキサントフモールの抗腫瘍作用機序の解明 |
基盤研究C 研究代表者 社本 智也 |
17K10709 臨床応用を目指した膵癌の局所進展・神経浸潤に与えるGirdinの作用機序の解明 |
基盤研究C 研究代表者 佐藤 崇文 |
17K16575 食道癌microRNAにおける癌関連microRNAの同定と機能解析 |
若手研究B 研究代表者 佐本 洋介 |
2018年
18K08688 スーパーアパタイトナノ粒子法を用いたmiRNAによる胃癌腹膜播種治療法の開発 |
基盤研究C 研究代表者 坂本 宣弘 |
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18K16371 大腸癌における癌周囲微小環境に着目した薬剤耐性機構の解明と治療への応用 |
若手研究 研究代表者 志賀 一慶 |
18K08714 臨床応用を目的とした放射線耐性膵癌における癌幹細胞マーカーCXCR4の検討 |
基盤研究C 研究代表者 今藤 裕之 |
18K08713 臨床応用を目的とした膵癌におけるオメガ3不飽和脂肪酸の抗血管新生効果の検討 |
基盤研究C 研究代表者 林 祐一 |
2019年
19K07694 癌間質細胞由来MCP-1による抗血管新生阻害剤耐性獲得の打破 |
基盤研究C 研究代表者 原 賢康 |
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19K18158 大腸癌のFTDに対するDNA損傷応答の解明と治療効果増強への展開 |
若手研究 研究代表者 廣川 高久 |
19K18127 インフラマソーム機構に関連した胃癌における血行性転移制御の解明と新規治療薬の開発 |
若手研究 研究代表者 佐川 弘之 |
19K18156 食道癌の浸潤におけるNOTCH1シグナルの解析 |
若手研究 研究代表者 大久保 友貴 |
19K18159 TIMPを介した癌関連線維芽細胞による大腸癌進展調節機構の解明と臨床応用 |
若手研究 研究代表者 仲井 希 |
19K18157 臨床応用を目指した膵癌におけるエスシンのNF-κBを介した抗腫瘍効果の解明 |
若手研究 研究代表者 大見 関 |
19K18098 臨床応用を目指したスクテラリンのGirdin抑制による膵癌抗血管新生効果の検討 |
若手研究 研究代表者 前田 杏梨 |
2020年
20K09041 手術支援ロボットにおける運動力学評価を用いた技術評価とトレーニング法の開発 |
基盤研究C 研究代表者 瀧口 修司 |
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20K09015 人工知能とテキストマイニングを用いた肥満手術の新しい適応基準の確立に向けた研究 |
基盤研究C 研究代表者 田中 達也 |
20K17699 臨床応用を目指した消化器癌に対するzerumboneの抗腫瘍効果の検討 |
若手研究 研究代表者 坪井 謙 |
20K17698 食道癌におけるWNTシグナル~ベータカテニンを介さないTCF活性のメカニズム |
若手研究 研究代表者 藤幡 士郎 |
20K17624 肥満予防に向けた胃に発現するTRPチャネルと食欲との関連解析 |
若手研究 研究代表者 早川 俊輔 |
2021年
21H03006 膵癌における新規分子標的薬の開発を目指した,化学放射線耐性メカニズムの解明 |
基盤研究B 研究代表者 松尾 洋一 |
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21K08739 大腸癌に切り込む事で生じる腫瘍学的な変化の解明と臨床への応用 |
基盤研究C 研究代表者 牛込 創 |
21K08716 癌関連線維芽細胞とChitinase3-like1が関与した大腸癌進展機序の解明 |
基盤研究C 研究代表者 渡部 かをり |
2022年
22K08808 臨床応用を目指した放射線耐性膵癌のCXCL12/CXCR4シグナルの機能解析 |
基盤研究C 研究代表者 今藤 裕之 |
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22K16539 細胞周期DNA修復からみた5-FU抵抗性大腸癌の治療強化法とターゲット蛋白の同定 |
若手研究 研究代表者 鈴木 卓弥 |
2023年
23K08137 手術支援ロボットにおける眼球・腕運動の協調制御解明とトレーニング法の開発 |
基盤研究C 研究代表者 瀧口 修司 |
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23K08138 抗癌剤耐性膵癌におけるGirdinの機能解析と新規治療薬への応用 |
基盤研究C 研究代表者 林 祐一 |
上部消化管外科グループの研究
上部消化管外科グループでは、おもに食道がんと胃がんの研究を行っています。とくに食道がん(扁平上皮がん)は欧米からの研究論文の発表は少なく、日本と中国からの研究発表が多いことで知られています。食道がんの治療成績向上のためには、基礎的研究から臨床応用、臨床研究といったプロセスが不可欠です。比較的症例数の多い胃がんにおいても、ピロリ菌関連胃がんは減少傾向にありますが、まだまだ罹患率の高いがんであり、メカニズムのよくわかっていないがん腫のひとつです。
私たちは分子生物学的手法を用いた遺伝子発現や、タンパク発現の解析、microRNAの解析を行っています。とくに手術よって得られたがん組織(患者様に同意を得て保存しています)は、診断に使用したあとは、利用することがありませんが、それらの一部を貴重な研究材料として使用させていただいています。ある遺伝子やタンパクの発現の強弱、あるいはその有無が、患者さんの予後に影響しているか、進展ぐあいや、リンパ節への転移に関わっているかを統計学的に解析しています。基礎研究ではありますが、より臨床に近いところでの成果を得ることで、将来の臨床応用をめざす夢のある研究をしています。また、術前術後の化学療法、周術期の栄養療法、患者さんの合併症の状態、など過去の膨大なデータベースをもとに、後ろ向きにデータの解析を行い、すこしでも現在の治療に役立てる解析をしています。今後も患者さんに還元できる研究をめざしていきたいと思います。
下部消化管外科グループの研究
下部消化管グループでは様々な大腸がん細胞株と豊富な臨床検体を用いた基礎研究を継続して行っております。常に臨床応用を目指し、社会に役立つ研究を心がけております。以下に我々のグループで行っている研究の一端をご説明します。
① 大腸がんと周囲の間質組織における微小環境についての検討
大腸がんの進展を研究するにあたり、がんそのものだけではなく、周囲の微小環境について研究を行うことは現在の我々の重要なテーマでありトピックスの一つです。我々は炎症性サイトカインであるIL-6に着目し、IL-6ががんの進展に及ぼす影響について分子生物学的に検討をしております。さらにがん周囲間質細胞(CAF)ががんの進展に及ぼす影響について詳細を検討しております。
② 大腸がんのアポトーシス機序の解明
大腸がんの抗がん剤などに対する治療抵抗性の獲得機構ははっきりとはわかっていません。我々は抗アポトーシス蛋白であるBcl-2ファミリー蛋白に着目し、この中でもBcl-xLとMcl-1という蛋白が非常に重要な役割を果たしていることを見いだしました。現在は正常細胞に作用を及ぼさずにがん細胞においてのみこれらの蛋白を抑制させる方法を検討しております。
また、細胞周期が大腸がんの抗がん剤に対する治療抵抗性において非常に重要な役割を果たしていることが判明しております。これらの細胞周期を制御することで、様々な抗がん剤の抗腫瘍効果を高める研究を進めております。
大腸がんと周囲の間質組織における微小環境のシェーマ
肝胆膵外科グループの研究
肝胆膵グループの研究には長い歴史があります。がん研究に遺伝子探索の手法が導入されたころから、いち早くがんの進行や転移のメカニズムの解明に挑んできました。
① 膵がんの転移に関する研究
膵がんは非常に悪性度の高いがんですが、その原因のひとつに肝臓などへ転移しやすいことがあげられます。膵がんが転移するメカニズムには、血管新生(がんが栄養を得るために、がんの周囲に血管が新しくできる状態)が深く関わっており、それにはIL-1やIL-8といった炎症で増加するタンパク質(炎症性サイトカインといいます)が重要な役割を担っていることを世界にさきがけて報告しました。これらの結果をもとに、臨床応用を目指してさらに研究をすすめています。
炎症性サイトカインを標的とした治療によるがんの抑制効果
炎症性サイトカインをターゲットとした膵がん治療を目指して(マウスを使った動物実験)。
無治療群(左図)に比べて、炎症性サイトカインを標的とした治療(右図)はがんの抑制効果を認めました。(Matsuo Y Int J Cancer より改変)
② 膵がんの抗がん剤耐性に関する研究
膵がんの治療を困難にしている原因には、膵がんの抗がん剤への耐性(抗がん剤が効きにくい性質)があげられます。私たちは、抗がん剤に耐性をもつ膵がん細胞株を樹立することに成功し、その遺伝子を網羅的に解析することにより、原因となる遺伝子をつきとめました。この遺伝子を抑えることを目標として創薬の開発に挑んでいます。
これらの研究は、アメリカ最大のがんセンター(MD Anderson Cancer Center)と共同で研究を行っており、その成果は国内外の学会から高い評価をいただいております。今後も、悪性度の高い肝胆膵領域のがんの撲滅を目指して研究をすすめてまいります。
ご寄付をいただきました。
当科の膵臓研究に対して、神谷ちとせ様から高額なご寄付をいただきました。今後も膵癌撲滅の研究をすすめてまいります。神谷様、有難うございました。
臨床試験施設データーマネージャー、診療情報管理士資格を取得
消化器外科医局秘書の山田信子さんが平成16年12月、財団法人がん集学的治療研究財団より財団の臨床試験施設データマネージャーとして認定されました。 さらに、平成17年4月に診療情報管理資格試験に合格し、診療情報管理士の資格を習得されました。
現在、当教室では、医療の質の向上をめざし、さまざまな臨床試験や治験をおこなっております。山田さんがデータマネージャーと診療情報管理士の資格を取られたことで、院内でも率先して臨床試験に取り組み、高い評価を得ています。